愛犬のアトピー性皮膚炎への対処として、ステロイドはとても効果的な薬です。
人間でも使われる有名な薬ですが「副作用が危険」「効果が強いため怖い薬」などと、耳にしたことはありませんか?
今回はそんな【ステロイドの効果と副作用】に関するお話です。
大切な愛犬をしっかり守ることができるように、ステロイドについての正しい知識を身につけておきましょう。
ステロイドはアレルギー反応を抑制する薬
ステロイド薬には、皮膚の炎症を鎮めたり、アレルギー反応を抑制する効果があります。
実は、もともと犬や人間の体内では、こういった役割を持った物質「ステロイドホルモン」を自発的に作る機能があります。
アトピー体質の場合、このホルモンが体内で足りなくなることが多く、それを補うことを目的として、人工的に作られたのがステロイドです。
・即効性があり、ほぼ100%の確率で症状が改善する
・安価で手に入るため、飼い主さんの金銭的な負担が少ない
・古くから使われている薬なので、使用実績が豊富
ステロイドを使用する前に知っておくべきこと
ステロイドの副作用には、体内で自然にステロイドホルモンが作られる場所「副腎(ふくじん)」という器官が深く関わっています。
副腎とは、腎臓の近くにある小さな器官で、生命維持に関するホルモンを分泌しています。その中でも副腎の皮質という部分から分泌されるホルモンは、副腎皮質ホルモンと呼ばれ、ステロイド薬品の元となっている物質です。
健康な犬は普段、この体内機能をうまくコントロールしながら過ごしていますが、アトピー体質の犬は体内でアレルギー反応が頻繁に起こることで、ホルモンの分泌量が不十分になります。
・糖質・タンパク質・脂質の代謝を調整する
・水・電解質・血圧を調整し、腎臓からの水分排出を促進する(排尿)
・免疫機能の調整や免疫反応を抑制し、炎症を抑える
どうして副作用が起きるの?
ステロイド薬を投与すると、体内のステロイド不足は解消されますが、そのぶん代謝や血圧・排泄機能、免疫反応の抑制力が増してしまい、副作用があらわれます。
副腎皮質は担っている役割が多いため、全ての作用をバランスよく調整することも難しく、副作用も多く現れがちなんですね。
ステロイドによる副作用には命に関わるものもあるので、ステロイドを使う治療では投与量を調整しつつ、うまく副作用を抑えていくことを念頭に入れて使用することが大切です。
ステロイドの主な副作用
ステロイドを投与した際の副作用で、代表的な症状と対策などをまとめてみました。
なお、ステロイドの副作用には、投与してから短期間のうちに現れる症状と、長期間投与した場合に現れる症状があります。
投与量や個体差によって症状が異なる場合もあるので、気になる症状が出たときは、獣医さんと相談しながら、計画的に投与していきましょう。
・食欲が増え、体重が増加する
・水分の排泄機能が促進され、トイレの頻度が増える
・免疫抑制により、感染症などのリスクが高まる
食欲が増えたり、のどが乾いたりといった症状は、ステロイド服用時に多い症状なので、短期間であれば心配はありません。
ただし、嘔吐や下痢などが頻繁にみられる場合は、ひどくなると胃潰瘍を起こす可能性があるので、獣医師に相談を。
病院の方針によりますが、あらかじめ胃薬を一緒に処方してくれるところもありますよ。
ステロイド治療中は普段より丁寧に生活させよう
ステロイド治療中は免疫力が低下しているので、念のため他犬との接触は避けることをおすすめします。
散歩中の拾い食いなど、感染症のリスクを高める行動はさせないようにしてくださいね。
できれば外出時は洋服を着せ、皮膚を保護してあげましょう。
ステロイドを長期的に使用した際の副作用
クッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)
体内のステロイドホルモンが過剰になると、クッシング症候群を引き起こします。
クッシング症候群は、肝障害や糖尿病、高血圧や筋肉の低下など様々な症状がみられる病気で、一度発症すると完治することはありません。
自己判断で投与量を増やすことは絶対にせず、気になる症状がみられた場合はすぐに動物病院を受診するようにしましょう。
アジソン病(副腎皮質機能低下症)
アジソン病とは、ステロイドが常に外部から補給されることで、副腎機能が低下する症状です。
自力でホルモン分泌を行うことができなくなるため、この状態の時にステロイドの投与を中止すると急性副腎不全が起こり、命を落とすこともあります。
自己判断でステロイドを中止することは絶対にしないこと。アジソン病の判別には血液検査が必須なので、治療中は定期的に通院しましょう。
さいごに
ステロイドには様々な副作用が現れますが、正しい使うことができれば、アトピー症状を緩和・改善するために大きく役立ちます。
アレルギー症状の改善は一時的なものではありますが、これほど効果が大きい薬品は他にないので、かかりつけの先生に相談しつつ、副作用を抑えながら、上手に使っていきましょう。
あなたとあなたの愛犬が、今後長く健康で暮らせるよう願っています。
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